地球規模でプラスチックごみ(プラごみ)の問題になっている。特に海洋プラスチックは深刻で、このままだと2050年には海にいる魚よりもプラごみのほうが多くなってしまうといわれている。この問題を解決すべく、ネスレ日本株式会社ではチョコレート菓子『キットカット』の主力商品である大袋タイプ5品の外袋をプラスチックから紙パッケージに変更する取り組みを始めた。すでに2019年9月下旬の出荷分から全量切り替えを行っているので、手に取った人も多いのではないだろうか。

先日行われたネスレ日本による『「キットカット」の過去・現在・未来をお伝えするラウンドテーブル』では、メディア関係者を招いて「キットカット」の歴史と、未来に向けた取り組みについて説明があった。登壇したネスレ日本コンフェクショナリー事業本部マーケティング部長の竹内雄二氏は「日本のチョコレート市場では、実は『キットカット』がシェアナンバーワンのブランド。1日あたり400万枚も製造・消費されています。また、世界100ヶ国以上で売られているが、日本が一番の消費国。その日本市場で起こす具体的なアクションとして、主力商品の大袋タイプ5品の外袋を現在のプラスチックから紙パッケージへ変更することにしました」と話す。

この取り組みにより、ネスレ日本では年間約380トンのプラスチック削減を見込んでいる。ただし、今回の紙パッケージへの変更は外袋のみで、個包装に関しては商品の品質上の問題からプラスチックを継続して使用していくという。そして2021年には個包装をリサイクルしやすい単一素材にすることを目指していくという。
たとえコストアップして収益が下がろうとも取り組むべき課題

外袋のみとはいえ、主力5商品の外袋をすべて紙パッケージに変更するということは、それだけ紙資源が必要となる。プラスチックよりも紙のほうがコストもかかるし、森林伐採の問題も気になるところ。これについて竹内氏は「(コストについて)具体的な数字は申し上げられませんが、“けっこう”コストアップになっています。プラスチックから紙へと変更することに関して、正直社内でも議論がありました。ただ、こうした取り組みへのアクションは起こしていくべきと判断してスタートすることになりました」とコメント。森林伐採に関しては「FSC(Forest Stewardship Council、森林管理協議会)の認証を受けた紙を使い、じゅうぶん環境に配慮しています」とのことだった。

また、日本市場で「キットカット」が消費者に受け入れられる背景として竹内氏は「『キットカット=きっと勝つ』という語呂で、何かに頑張る人へ応援のためにキットカットを贈るという声が、九州地区から上がったんです。それが全国的に広まって、同時に自然発生的にメッセージ・デコレーションが行われていると知りました。そのために紙のパッケージというのは最適。折り紙代わりに外袋を使っていただいてもいいし、楽しく環境問題に取り組む行動のきっかけとして、今回の紙パッケージへの変更が寄与できれば」と話した。
新CMは「できるかな」のノッポさんが登場し、プラごみ削減を啓蒙
また、今回の「キットカット」主力商品の大袋タイプ5品の外袋を紙パッケージへと変更したことに伴い、同社では新テレビCMの包装を開始した。NHK教育(現:Eテレ)で1970~1990年に放送されていた「できるかな」に出演していたノッポさん(高見のっぽ)と、キャラクターのゴン太くんを起用。「プラスチックごみの削減できるかな?」「キット、できる」と題し、今までなら破棄されていたパッケージを使って折り鶴を作り、メッセージを書き込んで大切な人へ贈ろうという啓蒙を開始している。すでにテレビで同CMを見たという人も多いだろう。

ラウンドテーブルの最後に竹内氏は「たとえ収益を圧迫しても、これはやるべき取り組み。強い決意と意志を持ってやっていきます。それがブランドの未来、地球の未来につながると私は考えています。これからは消費者の皆さんに、弊社が一緒に社会問題を解決するきっかけを作り、未来を良くしようと考えてくれるブランドだと思っていただきたい。これから10年、20年と成長して、消費者の皆さんから支持を得るための新しい一歩が、この紙パッケージへの変更だと考えています」と締めくくった。