医療・介護業界に横行する「おとり求人」 すでに破滅寸前の人材採用問題を解決するには?

2019年の出生数が90万人割れという衝撃的なニュースが流れているが、今後訪れる少子高齢化社会において医療・介護業界はますます重要になってくる。しかし、その業界を支える人材が深刻な不足状態で、極端な「売り手市場」となっている。施設と紹介業者のパワーバランスが崩れ、手数料のつり上げや「おとり求人」など、何でもありの状態が横行しているという。

医療・介護業界専門の求人サイト「コメディカルドットコム」を運営するセカンドラボ株式会社は、このほど医療・介護業界の破綻寸前とも言える人材採用問題について、現状とその要因、解決方法などについて語った。

医療・介護業界は深刻な人材不足で極端な「売り手市場」状態


ラウンドテーブルの壇上に立ったセカンドラボの代表取締役社長・巻幡和徳氏は、医療・介護業界の人材採用問題について「公的な資金によって病院や介護施設は運営されているが、一般企業に比べて財源が非常に限られている。現在は、本来なら施設の設備投資や職員の待遇改善に使われるべき資金が、人材採用費に注ぎ込まれている状態。さらに看護師や介護職は専門職のため即戦力となりやすく、転職のハードルが低い。そこに人材紹介業者のエージェントが仲介として入り、採用手数料が嵩んでしまい、採用費高騰につながっている」と指摘。

セカンドラボのアンケート調査によると、看護師の採用手数料は年収の30%以上が11.9%と前年比で約2倍に増加。さらに介護職では、採用手数料は年収の30%以上が14.5%となんと約5倍にも増加しているという。

しかし、現状では人材不足による売り手市場のため、どうしても人材紹介サービスやエージェントに頼らざるを得ない。巻幡氏によると「自社のサイトや転職サイトで募集をかけても、なかなか採用できないどころか、応募すらないのが現状。業界の特徴でもあるが、人材紹介系の企業が力を持っており、施設とエージェントのパワーバランスが崩れて、採用費の高騰に歯止めがかからない。その他の要因ももちろんあるが、病院や介護施設の経営が逼迫され、閉鎖する施設も出てくる。もはや破綻寸前の状態だ」と警鐘を鳴らす。

人材紹介会社に頼らざるを得ない医療・介護業界に変革の機運を!

人材紹介会社による採用手数料は、看護士で1人あたり80~150万円、介護士で70~100万円(正職員採用の場合)が相場となっている。こうした高額の採用費が病院や介護施設の経営に悪影響を与えているとセカンドラボは指摘する。巻幡氏は「高額の採用費を支払っても、人材不足の問題は根本的な解決にはならない。人材が移動するだけで、従事者の母数が増えていないので業界全体で見ると何も付加価値を生んでいない状態」と現状を分析する。

さらに医療・介護業界の人材採用問題に悪影響を与えているのが、人材紹介会社による何でもありの集客。特に「おとり求人」と呼ばれる、取り引きがないにも関わらず無断で求人情報が掲載されていたり、募集が終了しているのに掲載され続けていたりするケースが横行しているという。これは人材紹介会社が、求職者を自社サービスへ誘導し、登録を促す手法として、募集する病院や介護施設に無断で行われることがほとんどだそうだ。

実際、セカンドラボのアンケート調査によると、こうした「おとり求人」に接した経験のある病院や介護施設は半数以上に及び、求職者は60%を超えるという。これらの悪影響について、病院や介護施設は問題意識を持っているのは事実だが、それでも人材紹介サービスの利用をやめられない現実がある。我々が医療や介護サービスを受けることができるのは、現場の従事者が薄給激務でありながら支えてくれている“善意”のおかげ。その善意を利用する人材紹介サービスに頼らず、健全に人材を確保できる市場を構築しなければならないという。

セカンドラボが運営する「コメディカルドットコム」は、ITによる適正な仕組みを構築することで医療・介護業界の採用構造を変革しようと目的をもって立ち上げた求人サイト。従来、エージェントが担ってきた業務をシステムで代替し、効率化によって低価格でサービス提供を実現できる。巻幡氏は「実際、エージェントに依頼すれば120万円以上の採用手数料が必要なところ、コメディカルドットコムなら30万円に採用費を削減できる。これまでの1/5~1/10も経費削減が可能。コメディカルドットコムは転職市場の適正化によって医療・介護業界全体の構造改革、および仕事の魅力をアップして従事者の母数を増加させることを目指している」とコメントしている。

なお、今後のセカンドラボの活動について「業界内外に問題を周知して、改革の賛同者を募っていく。さらにクライアント8,600社の署名を集め、業界全体に変革の気運を高め、厚生労働省に紹介手数料や“おとり求人”の規制を提言していく」と巻幡氏は話してくれた。