いま話題の「情報銀行」の最新動向と DNPの取り組みとは?

大日本印刷株式会社(DNP)が新規事業として取り組む「情報銀行」に関するメディア向けの説明会が11月29日、DNP 市谷左内町ビル(東京都新宿区)にて開催された。

説明会は、大日本印刷株式会社専務執行役員の蟇田栄氏による挨拶で幕を開け、冒頭では、総務省情報通信国際戦略局情報通信政策課調査官の飯倉主税氏により、「情報銀行」の最新動向と認定制度及び、「情報銀行」の社会実装に向けた取り組みが紹介された。

そもそも「情報銀行」とは、個人に代わって資産を運用する信託銀行のように、一般の生活者によって預けられたプロフィールや連絡先、購入履歴、位置情報、健康情報などのさまざまな個人データを管理し、本人の同意を得た上でニーズのある第三者に対して提供するサービスのこと。企業が個人から情報を預かって第三者提供などの運用を行い、そこから得た利益が個人に還元されるという仕組み。つまり、利用者は情報提供することで、ポイントをもらえたり、優遇サービスを受けられたりするわけだ。

すでに米グーグルや米アマゾン・ドット・コム、米フェイスブックなどの大手IT業者による個人データの寡占が進む中、ポイントカードなどを通じて個人データはさまざまな事業者に散在しており、消費者の管理下に置かれることなくマーケティング活動などに活用されているのが現状だ。その点、「情報銀行」ではパーソナルデータをきちんと個人で管理できるようにすることが義務付けられているため、企業間での個人データの流通を活発化させるだけでなく、消費者保護の観点でも注目を集めている。

遡ること10月19日、情報銀行の認定事業が2018年12月から開始されるにあたり、総務省と事業を請け負う日本IT団体連盟が共同で説明会を実施したところ、新たな事業機会の創出を見込む200社を超える企業の担当者が来場。すでに三菱UFJ信託銀行や電通、富士通、日立製作所などが情報銀行への参入を表明しており、実証実験が進められているという。

◆総務省の「情報信託機能活用促進事業」とは?

日本政府も、IoT・ビッグデータ・AI・ロボットを軸とする第4次産業革命の実現により、2020年までに30兆円の付加価値を創出するために、データ主導社会の実現に向け、官民連携した社会実装のための積極的な取り組みの推進及び、制度整備を進めている。そんな中、2018年12月から総務省によって実施されるのが「情報信託機能活用促進事業」だ。

「情報信託機能活用促進事業」とは、「情報銀行」に必要なルール等を検証するとともに、情報信託機能等を運用するにあたっての課題の抽出・解決策の検討及び、モデルケースの創出を目的とした実証実験のこと。すでに6件の委託先が選出されており、そのうちの2つが、DNPが中部電力、JTBとともに行う共同事業というわけだ。

まず一つ目は、DNPが中部電力、豊田市らと共同で行う実証事業「地域型情報銀行」だ。実証実験の目的をはじめとする詳細は以下の通り。

◆目的:生活者のパーソナルデータや日常の生活データを集約・管理し、流通させることで、“地域サービスの効率化・高度化”や“日常の買物等の不便の解消”につなげていく。

◆共同事業者:DNP、中部電力、キュレーションズ株式会社や豊田市役所、豊田まちづくり株式会社、株式会社山信商店

◆実証時期:2018年12月~2019年2月

◆ユーザー数:500人

◆サービス概要・ポイント
◇地域格差や世代間格差をなくすため、買い物に関するパーソナルデータを活用!
スマートフォンやIoT機器が普及するなか、ICT基盤やITリテラシーなどに関して、都市部との地域間格差や世代による違いが顕著となり、生活者や事業者の便益の差も広がると想定される。情報銀行を社会に実装していくには、高齢者や地域の中小企業・個人商店など、多様な生活者や事業者が格差を感じることなく安全・安心に情報銀行に参加して、メリットを享受できる情報流通のモデルケースの構築が必要になってくる。そこで本実証事業は、生活者の身近な存在である電力サービス事業を中心に、地域の自治体や他のサービス事業者と連携し、身近で参加しやすい「地域型情報銀行」を構築。参加するサービス事業者は、買物の不便や苦労を感じる生活者のパーソナルデータを活用し、買物した品物の宅配サービスの提供や生活者一人ひとりのライフスタイルやニーズに合わせた新しい買物体験の提案などを行い、生活者の利便性を高めると同時に、サービス事業者の事業効率化やサービスの高度化を目指す。

続く二つ目は、DNPがJTBと共同で行う実証事業「観光分野での情報銀行」だ。旅行者のパーソナルデータを情報銀行で集約・活用する「次世代トラベルエージェントサービス」を共同で開発し、東京の上野エリアと京都の岡崎・蹴上および周辺エリアでの実証事業を2018年12月より開始するという。

実証実験の目的をはじめとする詳細は以下の通り。

◆目的:旅行者がストレスなく最適なサービスを選択・利用するための支援と、地域の観光関連サービス事業者による効果的なデータ活用や、サービス提供の両立を目指す。

◆共同事業者:DNP、株式会社JTB、株式会社JTBコミュニケーションデザイン、株式会社JTB総合研究所、上野観光連盟、京都岡崎魅力づくり推進協議会

◆実証時期:2018年12月~2019年2月

◆ユーザー数:1,000人(東京および京都の合計)

◆サービス概要・ポイント
◇旅行中の負担を軽減!
利用者はアプリに、身元や連絡先、旅行先でのリクエストや趣味、行動プランなどのパーソナルデータを登録。アプリには、行動プラン管理機能、LINE連携によるオファー受信・メッセージング機能、観光施設等への入場・利用手続きを簡易にするQRコードによるアクセス管理機能等があり、データ提供の判断を含む旅行中の多種多様な判断・行動を支援し、手続きの負荷軽減、サービスマッチングなどの最適なコミュニケーションを実現する。

◇旅行者に付加価値の高い体験を提供
50社以上のサービス事業者から特別観覧や文化体験、観光ガイドなど、旅行者のニーズにマッチし、通常の旅行では体験出来ない、特別なサービスを受け取ることができる。

(まとめ)
いずれの案件も、今回の実証実験の結果を踏まえて「情報銀行」として正式に認定されることで、地域の課題を解決していくことが期待されている。既存のシステムではパーソナルデータが企業のメリットにつながることが多いが、「情報銀行」の登場によって企業だけでなく、ユーザー自身にも有効なサービスが提供されることになると予想されている。すべてのサービスを理解するにはかなり時間がかかりそうだが、よりよい暮らしの実現のために、企業や行政が連携して進められることは、まだまだありそうだ。